「ユーロ2020」決勝トーナメント

ユーロ(欧州選手権)フットボール・ゲームズ

ユーロ2020のラウンド16では、イングランドとドイツがウェンブリーで対戦するという、まるで1966年ワールドカップ決勝のような顔合わせとなった。このステージまで来ると、どのチームもつわ者揃いだ。

ラウンド16

26/06/2021.
オランダ・アムステルダム
ヨハン・クライフ・アレナ
観衆:14,645
ウェールズ 0–4 デンマーク
得点:
27′ (デンマーク) カスパー・ドルベリ
48′ (デンマーク) カスパー・ドルベリ
88′ (デンマーク) ヨアキム・メーレ
90+4′ (デンマーク) マルティン・ブライトバイテ

試合の立ち上がりは、両軍ともに激しいプレスをかけて、相手に自由にプレーをさせず。お互いにそのすきを突いて、ゴールを狙う。徐々にデンマークがボールを保持して、ウェールズが守勢に回る。27分にデンマークのカスパー・ドルベリが先制点を決めると、ハーフタイムまでいいリズムを維持した。

48分にウェールズDFのクリアを拾ったカスパー・ドルベリがこの日2点目となるゴールを決める。すると、デンマークはリスクをおかしてゴールを目指すことはせず、後がなくなったウェールズは前がかりになった。

しかし、ウェールズはボールを保持しながらも、なかなかゴールに迫ることができず、逆にデンマークのカウンターアタックからピンチを招く。

試合終盤には、ウェールズが激しくプレスをかけてボールを奪おうとするが、デンマークが逆サイドにボールを振って、ヨアキム・メーレが決定的な3点目を決めた。

その直後のマルティン・ブライトバイテの4点目は、一度はオフサイドとされたが、VARで得点が認められた。終わってみれば、04と大差がついた。1試合を通して、デンマークが主導権を握ったと言えるだろう。

試合開始前のセレモニーでウェールズ代表は、デンマークのクリスティアン・エリクセンの早期回復を願い、10番のユニフォームを贈呈した。グループステージで試合中に心肺停止となり、九死に一生を得たエリクセンに、デンマークは良いニュースを届けることができた。

26/06/2021.
イングランド・ロンドン
ウェンブリー・スタジアム
観衆:18,910
イタリア 2–1 オーストリア
得点:
95′ (イタリア) フェデリコ・キエーザ
105′ (イタリア) マッテオ・ペッシーナ
114′ (オーストリア) サーシャ・カライジッチ

イタリア、オーストリアともに、試合の立ち上がりから果敢に前に行く姿勢を見せる。お互いがゴールを目指し、オープンな展開になり、激しいタックルの応酬になった。

32分に左サイドから中央に入ったボールに、イタリアのチーロ・インモービレが右足を一閃。弧を描いたボールはゴールのトップコーナーにj吸い込まれるかに思われたが、ゴールの枠に嫌われた。

52分には、ペナルティーエリアのすぐ外側でオーストリアがフリーキックを獲得。アラバが左足で直接狙うも、クロスバーの上に外れた。

65分にイタリアはファールを主張するも主審は流し、そのすきを突いてオーストリアがカウンターアタック。左サイドでダヴィド・アラバが頭で折り返し、マルコ・アルナウトヴィッチが頭で押し込む。オーストリアが先制かと思われたが、VARによりオフサイドの判定。

シュート数はイタリアのほうが多かったが、オーストリアはゴールネットを揺らした。VARがない時代であれば、オーストリアがここでアプセットを起こしていただろう。試合はどちらに転んでもおかしくなかったが、90分を終了し両者譲らず、延長戦に突入。

95分にゴール前に入ったボールに走り込んだイタリアのフェデリコ・キエーザが一人かわして、左足で至近距離からゴールに叩き込んだ。重要な場面で、イタリアが先制。

するとイタリアは俄然、勢いを増し105分に左からのクロスを落としたところに、マッテオ・ペッシーナが追加点を決める。

試合の最後15分は、オーストリアが最後の力を振り絞り攻撃を仕掛け、イタリアがカウンターアタックを返すという壮絶な展開に。

そして114分、コーナーキックからオーストリアのサーシャ・カライジッチがダイビングヘッドで1点返した。ユーロの歴史に残る名勝負になったと言えるだろう。

27/06/2021.
ハンガリー・ブダペスト
プスカシュ・アレーナ
観衆:52,834
オランダ 0–2 チェコ
得点:
68′ (チェコ) トマシュ・ホレシュ
80′ (チェコ) パトリック・シック

前半、オランダとチェコは、ともにゴールを目指すも得点は決まらず。

後半もお互いのゴール前でのプレーが多くなる。53分に最終ラインを突破されかけたオランダのマタイス・デ・リフトが手でボールに触れる。イエローカードが提示されるも、VARでレッドカードに変更になり、退場。

10人になったオランダは、ドニエル・マレンに代わり、クインシー・プロメスを投入し、布陣を整える。

しかし68分に、チェコのフリーキックから折り返されたボールをトマシュ・ホレシュが頭で得点。チェコがリード。

得点を返そうと、オランダはリスクをおかして前に出るが、チェコはその空いたスペースをついて攻撃。80分に左からのクロスに走り込んだパトリック・シックが決定的な追加点を決める。

27/06/2021.
スペイン・セビリア
ラ・カルトゥーハ
観衆:11,504
ベルギー 1–0 ポルトガル
得点:
42′ (ベルギー) トルガン・アザール

ベルギーとポルトガルともに激しい守備で試合に入り、相手に大きなチャンスを与えず。このままハーフタイムに突入するかに思われた42分、ベルギーがゴール中央でのパス交換から、トルガン・アザールがミドルシュートを決める。

ポルトガルは、追いつこうと攻勢を強める。しかし、なかなかベルギーを崩すことができない。時間は刻一刻と過ぎていき、焦りがプレーにもあらわれるポルトガル。それに呼応するようにベルギーも厳しく対応。

終盤にかけて試合はオープンな展開になり、83分にラファエル・ゲレイロの右足シュートがベルギーのゴールポストを叩く。努力の甲斐なく、試合はそのまま終了し、ベルギーが逃げ切った。キャプテンのエデン・アザールが負傷退場したことが、その試合の激しさを物語る。ベルギーも痛い損失を被った。

28/06/2021.
デンマーク・コペンハーゲン
パルケン・スタディオン
観衆:22,771
クロアチア 3–5 スペイン
得点:19′ (クロアチア) ウナイ・シモン (og)
38′ (スペイン) パブロ・サラビア
57′ (スペイン) セサル・アスピリクエタ
77′ (スペイン) フェラン・トーレス
85′ (クロアチア) ミスラヴ・オルシッチ
90+2′ (クロアチア) マリオ・パシャリッチ
100′ (スペイン) アルバロ・モラタ
103′ (スペイン) ミケル・オヤルサバル

試合の立ち上がりは、スペインがペースを掴む。決定的なチャンスが数度、訪れるが決めることができず。

19分に、バックパスをスペインGKのウナイ・シモンがトラップミスしオウンゴール。意外なかたちでクロアチアが先制点を決める。

38分、スペインは怒涛の攻撃からゴールキーパーが弾いたこぼれ球をパブロ・サラビアがゴールに叩き込む。スペインが追いつき、ハーフタイムのスコアは1–1。

57分、左サイドからのクロスにセサル・アスピリクエタが頭で合わせてスペインが逆転。

77分には、前がかりになったクロアチアの裏にできたオープンスペースに走り込んだフェラン・トーレスがボールを受けてシュートを決める。

85分、ルカ・モドリッチが深い位置からクロスしたボールがゴール前でスクランブルになり、最後にミスラヴ・オルシッチが得点を決めて、クロアチアが2–3と追い上げる。

後半ロスタイムに左サイドからのクロスにマリオ・パシャリッチがあわせて、クロアチアが同点に追いつく。逃げ切りを狙っていたスペインの選手たちはピッチに崩れ落ちる。試合はそのまま延長戦に突入。

勢いに乗るクロアチアに対して、足の重いスペイン。オウンゴールを喫したスペインGKのウナイ・シモンは、汚名をすすぐべく、スーパーセーブを連発。

両チームとも激しく相手ゴールに迫り、100分にアルバロ・モラタがトラップで相手を外すと豪快に蹴り込む。スペインが再び勝ち越す。

103分にはミケル・オヤルサバルが得点を決めて、スペインは一気に相手を引き離す。

延長戦が終わってみれが、3–5と両チームあわせて8得点。壮絶なシーソーゲームを最後に制したのはスペインだった。

28/06/2021.
ルーマニア・ブカレスト
アレーナ・ナツィオナラ
観衆:22,642
フランス 3–3 スイス
フランス 4–5 スイス (PK戦)
得点:
15′ (スイス) ハリス・セフェロヴィッチ
57′ (フランス) カリム・ベンゼマ
59′ (フランス) カリム・ベンゼマ
75′ (フランス) ポール・ポグバ
81′ (スイス) ハリス・セフェロヴィッチ
90′ (スイス) マリオ・ガヴラノヴィッチ

試合は、両チームとも相手の様子を見ながらの立ち上がり。

15分に左からのアーリークロスにハリス・セフェロヴィッチが頭で決める。スイスが世界王者相手に先制。

じわりじわりと攻勢を強めるフランス。しかし、得点を奪うことはできずにハーフタイムに突入。

後半のフランスは、キックオフからトップギアで得点を目指す。スイスも負けじと効果的な攻撃で追加点を狙う。

52分にスイスのシュテフェン・ツバーが突破を試みるとフランスのベンジャマン・パヴァールがスライディングタックルで止める。VARでPKの判定になり、フランスは絶体絶命。

55分、そのPKをリカルド・ロドリゲスが蹴るも、ウーゴ・ロリスが横っ飛びでセーブし力強く拳を握りしめる。

その直後の57分には、スイスのクリアを拾うと、中央で素早いコンビネーションからカリム・ベンゼマが抜け出し得点。フランスが同点に追いつく。

その2分後の59分には、再びフランスが中央のコンビネーションからカリム・ベンゼマがこの日、2点目。

75分には、フランスのポール・ポグバがロングレンジから、ゴールのトップコーナーにスーパーゴールを決める。

81分、ケヴィン・ムバブのクロスをハリス・セフェロヴィッチが得点。スイスが激しく追い上げる。

84分には、スイスのマリオ・ガヴラノヴィッチがゴールネットを揺らすもオフサイドの判定。

90分のマリオ・ガヴラノヴィッチのシュートは文句なしのゴール。土壇場でスイスが同点に追いつく。

スイスは勝ち越すチャンスがあったが得点できず。90+2分にはフランスのキングスレイ・コマンのミドルシュートがクロスバーを叩く。

90分で勝者が決まらず、試合は延長戦に突入した。

延長戦で得点はなく、120分で勝負がつかず。本大会初となるPK戦。スイスが5本全て決めたのに対して、フランスの5人目キリアン・エムバペが止められる。PK戦4–5で敗れ、優勝候補の筆頭フランスが大会を去った。

29/06/2021.
イングランド・ロンドン
ウェンブリー・スタジアム
観衆:41,973
イングランド 2–0 ドイツ
得点:
75′ (イングランド) ラヒーム・スターリング
86′ (イングランド) ハリー・ケイン

前半が始まると、緊迫した雰囲気で、この試合の歴史的な重みを如実に物語る。激しいフィジカルのぶつかり合いで、お互いに攻撃を潰しあい、なかなか得点が決まる気配はなかった。

75分にラヒーム・スターリングが中央でドリブル突破から、ショートパスを交換。そして最後に左からのクロスをラヒーム・スターリングが右足で決める。イングランドがついに均衡を破る。

81分にはドイツのトーマス・ミュラーがイングランドのディフェンスラインの裏に抜け出すが、シュートは決まらず。

86分、イングランドはドイツのボールをカットすると素早い攻撃を仕掛けて、左サイドのクロスにハリー・ケインが頭で合わる。イングランド追加点。

因縁の対決は、イングランドがホームで完封勝利した。

14/06/2021.
スコットランド・グラスゴー
ハムデン・パーク
観衆:9,221
スウェーデン 1–2 ウクライナ
得点:
27′ (ウクライナ) オレクサンドル・ジンチェンコ
43′ (スウェーデン) エミル・フォルスベリ
120+1′ (ウクライナ) アルテム・ドフビク

27分に絶妙なパスを、オレクサンドル・ジンチェンコが力いっぱいのボレーシュート。ウクライナが先制。

43分、スウェーデンのエミル・フォルスベリが放ったミドルシュートは、ウクライナのディフェンダーにあたりゴールイン。前半終了間際にウクライナが追いついて、試合はイーブンに。

56分にウクライナのアンドリー・ヤルモレンコのシュートが右ゴールポストを叩く。その直後には、スウェーデンが攻撃し、エミル・フォルスベリのシュートが右ゴールポストを叩く。

69分には、スウェーデンのエミル・フォルスベリのミドルシュートがクロスバーに当たる。

両チームともに得点チャンスはあったが勝ち越すことはできず、延長戦に突入。

スウェーデンのマルクス・ダニエルソンがボールをクリアした際に足の裏で相手選手を負傷させ、イエローカードが提示されるも、VARによりレッドカードに変更され98分に退場。

10人になったスウェーデンは得点機を作ることができない。ウクライナはボールを保持して、ゴールを狙いに行く。

スウェーデンは引き分け狙いで、時間が経過するのを待つ。しかし延長戦の後半ロスタイム、ウクライナの左クロスにアルテム・ドフビクが頭で叩き込んだ。ウクライナが勝ち越し、そのまま試合は終了。

準々決勝

02/07/2021.
ロシア・サンクトペテルブルク
クレストフスキー・スタジアム
観衆:24,764
スイス 1–1 スペイン
スイス 1–3 スペイン (PK戦)
得点:
8′ (スペイン) ジョルディ・アルバ
68′ (スイス) ジェルダン・シャチリ

コーナーキックから中央を超えてきたボールをジョルディ・アルバが左足でボレーシュートし、相手に当たってゴールイン。スペインが試合の立ち上がりに、幸先よく先制。

スイスがディフェンスラインに出したパスをスペインが処理しそこなう。それを拾って右からのクロスをジェルダン・シャチリが決める。スイスが同点に追いつく。

76分、スイスのレモ・フロイラーがジェラール・モレノに対する危険なタックルでレッドカードを提示され一発退場。

スペインは圧倒的にボールを支配しながら、90分で勝ち越すことができず。試合は延長戦に投入。

延長戦は一方的な展開で、スペインが攻めて集中砲火。スイスはボールクリアするのが精一杯で、なかなか相手陣内に入ることができず。

スイスは10人で何とか守りきり、PK戦に。劣勢だったスイスは精神的に優位にかと思われたが3人が外し、スペインに屈した。スイスにとって決勝トーナメント2試合連続のPK戦となったが、フランスを倒したのに次ぐジャイアントキリングはならなかった。

02/07/2021.
ドイツ・ミュンヘン
アリアンツ・アレーナ
観衆:12,984
ベルギー 1–2 イタリア
得点:
31′ (イタリア) ニコロ・バレッラ
44′ (イタリア) ニコロ・バレッラ
45+2′ (ベルギー) ロメル・ルカク

31分にイタリアは、フリーキックでペナルティーエリアに入れるも、チーロ・インモービレがボールを保持することはできず。しかし、イタリアはベルギーのボールをすぐに奪い返して、ニコロ・バレッラがドリブルで抜け出し得点。

44分にはロレンツォ・インシーニェが一人かわすと、右足を振り抜く。弧を描いたボールはゴールネットを揺らす。イタリアが追加点。

その直後に、ベルギーのジェレミー・ドクがペナルティーエリアにドリブル突破を試みると、ジョバンニ・ディ・ロレンツォが倒しPKの判定。

45+2分、そのPKをロメル・ルカクがゴール中央に突き刺し、ベルギーが1点返してハーフタイム。

後半、ベルギーは果敢に攻めるもゴールを割ることはできず。そのまま試合が終了した。

03/07/2021.
アゼルバイジャン・バクー
バクー・オリンピック・スタジアム
観衆:16,306
チェコ 1–2 デンマーク
得点:
5′ (デンマーク) トーマス・デラネイ
42′ (デンマーク) カスパー・ドルベリ
49′ (チェコ) パトリック・シック

コーナーキックから、フリーになったトーマス・デラネイが頭で得点。デンマークが先制。

前半終了間際の42分には、左サイドからの芸術的なクロスにカスパー・ドルベリが頭で合わせる。デンマークが追加点。

49分にはチェコが右サイドからアーリークロス。そしてパトリック・シックが右足であわせて得点。

チェコは試合終盤にかけて、全力で攻撃を仕掛けるも、同点弾を決めることはできなかった。

03/07/2021.
イタリア・ローマ
スタディオ・オリンピコ
観衆:11,880
ウクライナ 0–4 イングランド
得点:
4′ (イングランド) ハリー・ケイン
46′ (イングランド) ハリー・マグワイア
50′ (イングランド) ハリー・ケイン
63′ (イングランド) ジョーダン・ヘンダーソン

左サイドからラヒーム・スターリングがドリブルで切り込んで、ゴール前にパス。そのボールに素早く反応したハリー・ケインがシュートを決める。イングランドが先制。

ウクライナは追いつきたいところだが、攻撃は散発的で、なかなかイングランドのゴールに迫ることはできず、そのまま前半が終了。

46分にハリー・ケインがファールを受けて獲得したFK。クロスされたボールをハリー・マグワイアが頭で決める。イングランドが後半も立ち上がりの時間帯に得点。

50分には左クロスからゴール前のハリー・ケインが頭で相手ゴールキーパーの足元に決める。イングランドはリードを広げる。

ハリー・ケインのシュートをゴールキーパーが何とか弾いてイングランドはコーナーキックを獲得。そのボールを63分にジョーダン・ヘンダーソンがヘディングで得点。

決定的な4点目を決めると、イングランドのガレス・サウスゲート監督は、複数の主力選手をベンチに下げ、体力の消耗を抑えることに成功。大勝したことで、いい状態で準決勝に臨む素地が整った。

準決勝

06/07/2021.
イングランド・ロンドン
ウェンブリー・スタジアム
観衆:57,811
イタリア 1–1 スペイン
イタリア 4–2 スペイン (PK戦)
得点:
63′ (イタリア) フェデリコ・キエーザ
80′ (スペイン) アルバロ・モラタ

今大会の優勝候補の呼び声の高かったイタリアとグループステージから苦労しながら勝ち進んできたスペインの顔合わせとなった。キックオフ直後は、イタリアがスペインゴールに迫るも、その後は少しずつスペインがボールを保持するようになる。前半のスペインのボール試合率は61%だった。

ヨーロッパの攻撃サッカーを象徴するスペイン。堅守が伝統だがロベルト・マンチーニ監督のもと、攻撃のチームに生まれ変わったイタリア。

スペインのGKウナイ・シモンは度々、ゴールから飛び出してくることを余儀なくされた。そしてスペインも、イタリアの意表を突くシーンを何度も作った。

45分には、イタリアのエメルソン・パルミエリのシュートがスペインのゴールポストをかすめた。立ち上がりから攻撃全開の両チームだったが、前半は得点なし。しかし目の離せない見ごたえのある内容だった。

後半も攻撃の応酬で始まった。試合中盤とは思えないほどオープンな展開に。イタリアのカウンターアタックから、スペインがクリアしたボールを拾ったフェデリコ・キエーザが弧を描いたミドルシュートが、スペインゴールのトップコーナーに決まる。60分にイタリアが均衡を破る。

追う立場になったスペインは、さらに攻撃の手を強める。一方のイタリアは失点しないように慎重にプレーし始めた。

80分にはスペインのアルバロ・モラタが中央でドリブルからワンツーパスし、強烈なシュートを放ち、同点に追いつく。

その後も、スペインのペースで試合が展開する。イタリアは、どうにか凌ぎ、延長戦に突入。スペインは3試合連続で120分戦うことになった。

延長戦の前半もスペインの優勢は変わらず。延長戦の後半になると、スペインがポゼッションする一方で、イタリアも大きなチャンスを数回つくる。しかし得点は決まらず、PK戦に。

イタリアとスペインともに、1人目のキッカーが失敗。その後、スペインの4人目アルバロ・モラタのキックが止められる。一方でイタリアの5人目が落ち着いて決めて、イタリアが決勝進出を決めた。

アルバロ・モラタは、貴重な同点弾を決めながら、大事なPKを外し、苦虫を噛んだような表情で試合を終えた。

07/07/2021.
イングランド・ロンドン
ウェンブリー・スタジアム
観衆:64,950
イングランド 2–1 デンマーク
得点:
30′ (デンマーク) ミッケル・ダムスゴー
39′ (イングランド) シモン・ケアー (og)
104′ (イングランド) ハリー・ケイン (pk)

試合はホームのイングランドのペースで進んでいたかに見えた。しかし、30分にデンマークがゴール正面でフリーキックを獲得。ミッケル・ダムスゴーが蹴ったボールは壁のうえを越えてゴールイン。デンマークが先制し、ウェンブリー・スタジアムは一瞬、静寂に包まれた。

イングランドは反撃し、38分にはラヒーム・スターリングがゴール至近距離からGKと一対一の場面も、セーブされる。

直後の39分には右サイドから切り込んだラヒーム・スターリングのクロスをデンマークの主将シモン・ケアーがオウンゴール。ボールを触らなければシュートを決められる厳しい場面だった。

前半、ボールポゼッションはイングランドが60%と優勢ながら、決定機につてはほぼ互角だった。

後半は、最後までイングランドが勝ち越し弾を狙うも、デンマークが守りきり延長戦に突入した。

延長戦は、イングランドが攻めてデンマークが守る一方的な展開に。決定的なピンチでカスパー・シュマイケルが好セーブを見せた。

102分には、ラヒーム・スターリングがペナルティーエリアで倒れPKの判定。

104分、そのPKをハリー・ケインがシュート。カスパー・シュマイケルが左に横っ飛びし一度はセーブするも、そのリバウンドをハリー・ケインが押し込む。この試合で初めてイングランドがリード。

そのままイングランドが試合を支配し勝利。ウェンブリー・スタジアムで行われる決勝への進出を決めた。

決勝

11/07/2021.
イングランド・ロンドン
ウェンブリー・スタジアム
観衆:67,173
イタリア 1–1 イングランド
イタリア 3–2 イングランド (PK戦)
得点:
2′ (イングランド) ルーク・ショー
67′ (イタリア) レオナルド・ボヌッチ

イタリアが中盤の守備が確認確認できずにいた2分にイングランドがその穴を突いて自由に攻撃。右サイドからのクロスをルーク・ショーがボレーで合わせて得点。

35分には、イタリアのフェデリコ・キエーザが強引な中央突破から左足でミドルシュートもゴール右に外れる。

62分にもフェデリコ・キエーザがドリブル突破から右足を振り抜くも、ゴールキーパーが横っ飛びでセーブ。

67分、イタリアのコーナーキックのシーン。ゴール前で競り合って、ファーサイドに流れたボールをマルコ・ヴェッラッティがヘディングシュート。ゴールキーパーが触れた後、ゴールポストに跳ね返ったボールをレオナルド・ボヌッチが押し込む。アウェーのスタジアムでイタリアが追いつく。

その後もイタリアの猛攻撃が続き、イングランドのマネージメントははベンチワークに忙しくなる。

大車輪の活躍だったフェデリコ・キエーザがドリブル突破した際に相手と接触し負傷し、試合が一時中断。そしてその負傷のため、85分に涙の交代。この中断が幸いし、イングランドは形勢を立て直す。

ロスタイムに入ると、両チームが延長戦を意識し始めたのか、試合のペースが落ち着き始め、好機と見たら一撃で仕留めることを目論む。しかし、両チームともにこの時間帯の失点の危険性を理解しており、激しく守り続け、ホイッスルが鳴った。

慎重に延長戦に入るイングランドとイタリア。

108分には、カイル・ウォーカーのロングスローからイングランドが大きなチャンスをつかむも、イタリアのGKが好セーブ。

両チームとも、何とかゴールに迫るもゴールは決まらず。ユーロ2020の覇者はPK戦で決められることになった。

イタリアの2人目が外したのに対して、イングランドが3人目と4人目が外す。イタリアの5人目が決めたら勝負が決まる状況で、イングランドGKが何とか触ったボールはゴールポストに当たり、止められる。首の皮一枚つながったイングランドの重圧のかかる5人目は、若干19歳のブカヨ・サカ。甘いコースに入ったボールは無慈悲にも止められた。

イタリアは勝利に沸く一方で、PKを外した若きイングランドの選手たちは涙に顔を覆った。この悔しさを糧にして、3年後は一まわりも二まわり大きくなっていることだろう。

イタリアの伝統を覆して、攻撃サッカーを貫いて頂点に導いたロベルト・マンチーニ監督は、走り寄ってくるアズーリの選手たちと抱き合いながら、涙に咽んだ。従来は堅守がチームカラーのイタリアサッカーだが、将来それが攻撃的なスタイルに変わっているとすれば、それはロベルト・マンチーニの功績が大きいと言われるだろう。

表彰式の時が過ぎていくとともに閑散としていくウェンブリー・スタジアムは、コロナ禍の2021年に開催されたユーロ2020を象徴しているかのようだった。

「ユーロ2020」グループステージ

異例づくしのユーロ2020

著者:長田拓也 Takuya Nagata. Amazon Profile

小説作家、クリエーター。ブラジルへサッカー留学し、リオデジャネイロにあるCFZ do Rio(Centro de Futebol Zico Sociedade Esportiva)でトレーニングに打ち込む。日本屈指のフットボールクラブ、浦和レッズ(浦和レッドダイヤモンズ)でサッカーを志し、欧州遠征。若くして引退し、単身イングランドに渡り、英国立大学UCAを卒業。スペイン等、欧州各地でジャーナリスト、フットボールコーチ、コンサルタント等、キャリアを積む。クリエーティヴ系やテクノロジー畑にも通じる。社会の発展に寄与するアート・ムーブメント『MINIЯISM』(ミニリズム)とナレッジハブ「The Minimalist」(ザ・ミニマリスト)をローンチ。ダイバーシティと平等な社会参加の精神を促進する世界初のコンペティティヴな混合フットボール「プロプルシヴ・フットボール」(プロボール)の創設者。『Football Game Sphere』(フットボール・ゲーム・スフィア)でも執筆。
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